

2018年4月28日(土)~7月29日(日)
大正生まれのシスコ、澄子、ゑい。時を超えて描いた少女のときめき――
本展に出展する3人は、大正初期に生まれ、激動の時代を生きています。彼女たちは、不思議なことに皆、歳を重ねてから過去を追憶し、堰を切ったように大量の絵を描いています。川で遊んだ日、親戚がたくさん集まった日、妖精を見つけた日、戦時中のある日。それから妻となり、母となり、やがておばあさんとなって過ごした日々。在りし日の瞬間瞬間に宿るときめきを絵にしたためていきました。今そこにある暮らしや、過去からの出来事の一つ一つを肯定していく姿は、彼女たちによって描かれた絵のごとく美しく、歳を重ねてなお少女のようにきらきらと輝いているように見えます。3人の少女の眼を通して見つめられた大事な瞬間を伝える絵は、私たちに毎日がかけがえのないものであることを伝えてくれるでしょう。
会場 | ボーダレス・アートミュージアムNO-MA |
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開館時間 | 11:00~17:00 |
休館日 | 月曜休館(祝祭日の場合は翌日休館) |
観覧料 | 一般300円(250円) 高大生250円(200円) 中学生以下無料 ※障害のある方と付添者1名無料 ※( )内は20名以上の団体料金 |
(熊本県/1913-2005)
50歳の頃、画家である息子が描いた100号の絵画の表面の絵の具を包丁で削り落とし、上から自己流の絵を描き始めました。「私だって絵を描きたい」という思いが溢れ出したのでしょう。彼女にとって、描くべき素材は山ほどあり、家族のこと、幼少期の思い出、身の回りに溢れる愛すべき存在たちを、余すことなく描きました。
SHISUKO TOHMOTO 塔本シスコ公式サイト
(滋賀県/1916-2015)
90歳になってから過去を追想し絵日記を描き始めた、すみおばあちゃん。その動機にあったのは、遠い昔のことを、子どもや孫、ひ孫に伝えておきたいという気持ちでした。だんだんと記憶は鮮明さを増し、一日中描き続けていたこともあるといいます。残した絵には、彼女自身が少女であったころに思ったことや、目にしたものなど、大切な瞬間の数々が刻まれています。
(愛知県/1914-2016)
80歳から絵を描き始めたゑいさん。その後100歳を超えるまで、動物や家族との思い出、旅行先の風景など、親しみを感じているテーマを、正確な構図や遠近法などにはとらわれず、思うがままに紙の上に表現していきました。また、イラストレーターである孫との一連のコラボレーション作品も制作しており、彼女の絵を語るうえでとても大事な要素となっています。
土方ゑい作品WEB
2021年2月13日(土)~5月30日(日)
現代の情報社会において、私たちの身の回りには、様々な文字とことばが溢れている。街なかの標識・看板から新聞やテレビ・SNSに至るまで人が生きるなかで不可分である文字やことばであるが、そこには単なる情報伝達の手段を超えて、言霊といわれるように、“発し語り記す”人間の思考や感情のみならず魂さえ宿すこともある。
文学に限らず現代美術やアール・ブリュットの表現者においても文字やことばを扱った表現は珍しくない。本展では、“視る読む聴く”をキーワードに、文字とことばの持つメッセージやエネルギー、手書きからデジタルによるタイポグラフィーとしての造形など創造性豊かな作品を幅広く紹介し、日常とアートについて再考するものである。
本展アート・ディレクター、美術家
今井祝雄