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Aug

28

講演会「他者のまなざし」レポート

カテゴリー: ブログ |

8月24日(土)、展覧会「忘れようとしても思い出せない」の関連イベントとして、講演会「他者のまなざし」を行いました。
講師としてお迎えしたのは、作家の田口ランディさん。田口さんは、展覧会出展者の写真家・鬼海弘雄さんと古くからご交流があり、鬼海さんの写真集にも寄稿されています。
この日は、鬼海さんのエピソードを中心に、展覧会「忘れようとしても思い出せない」について、語っていただきました。



13:20の開場とともに、県内外から聴講に集まった方々が会場を埋め、いよいよトークが始まります。スクリーンに映した出展作品を見ながら、分析を加えていく田口さん。その中で興味深いキーワードが次々に飛び出します。

 例えば、西村一幸さんの作品を分析する中で言及があったのは「集合的無意識」という概念。「無意識」といえば、個々人の心の深層にあるもの、普段は意識しないもの、といった印象で語られることが多いのではないかと思います。一方で頭に「集合的」が付く「集合的無意識」は、個人という枠組みを飛び越え、民族や集団、人類といった集合体の心理の奥に深く根差す、そんな無意識を指しています。
 田口さんの分析では、西村さんが描く「ピラカンサ」の形状は、人類全般の心の奥底に根差すような、普遍性のある形であると考えられるとのこと。つまり、西村さんは「ピラカンサ」を描くことを通して、集合的無意識の領域にある形象を表しているのではないか、というのです。聴講された方々は、このような分析の数々に関心をもって聞き入っていました。


西村一幸≪ピラカンサ≫2009

そして、後半では鬼海弘雄さんについてのお話が展開されました。浅草で40年以上にわたり、往来の人々を撮影し続ける鬼海さん。田口さんも鬼海さんの撮影に同行されたことがあるそうです。浅草を歩く鬼海さんが、撮るべき人を見つけるスピードは大変速く、また撮影自体も長い時間はかけないそうです。デジカメが普及した現在、シャッターを多く切ることが当たり前となっていますが、鬼海さんは3回以内のシャッターで撮影を終えるというルールを課されていらっしゃることが明かされました。



さらに田口さん、鬼海さんの撮る人物の首から肩にかけてのラインに注目して見てほしいとのこと。鬼海さんは、撮影時に、このラインを非常に強く意識されていらっしゃるようで、その視点で作品を見ると、なめらかなラインや、力強いラインなど、首から肩にかけてのラインが、被写体となった人のその人らしさを物語っているように見えてきます。


鬼海弘雄 「忘れようとしても思い出せない」展示風景

田口さんのお話で、鬼海さんの作品についての考察を深め、その魅力をより一層感じることができました。

当日アンケートでは、

■自分自身の育った記憶の中にあるものや深いところの共通意識なども作品の源泉となることなど芸術(特にアール・ブリュット)にとっての肝となるお話だと思いました。(50代 男性)

■時間がたつほどにリアリティが増すのは何度も想起するからだけではなく、それこそが今の私のリアリティだから?
田口さんの言葉を聞けてよかったです。ほんとうに。(40代 女性)

■記憶が表現の源泉であるとか、集合的無意識から引っ張り出されるシンボルは全ての人にとって普遍性をもつといったお話が印象に残っています。(30代 男性)

といった感想が寄せられ、大変有意義な講演会となりました。

〇トークイベント「他者のまなざし」
日時:8月24日(土)13:30~15:00
会場:酒游舘(滋賀県近江八幡市仲屋町中6)
講師:田口ランディ(作家)

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