ボーダレス・アートミュージアム NO-MA

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Jul

19

エッセイシリーズ「忘れようとしても思い出せない」その2 作者紹介「齋藤勝利」

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現在、NO-MAで開催中の展覧会「忘れようとしても思い出せない」に合わせて、担当学芸員のエッセイを連載します。既に展覧会にご来場の方も、まだの方も、本展の見どころや裏話をご紹介する記事をお楽しみに。

その2 作者紹介「齋藤勝利」

 “ヴィデオメモリー”



NO-MA一階の前庭側に展示しているのは、山形県の齋藤勝利さんの作品です。
齋藤さんは生まれつき耳が聴こえず、聾学校に通っていました。遠足などでバスに乗った時、風景がよく見える席は、彼の特等席となっていたそうです。そこで彼は窓から目の当たりにした風景をスケッチブックに描いてきました。連なる山々や、走る路面、行きかう自動車などが、流れていくかのようにスピーディな筆致で表現されています。そして、スケッチブックの中には、一冊にわたり、全ページの稜線がつながった広大なパノラマを構成しているものもあります。
それらの絵から、齋藤さんにはとてつもない記憶力があるのではないかと推察されます。彼は目の当たりにした光景をリアルタイムで写生していたのではなく、記憶に焼き付けて、後からそれを再現するように描いていました。世の中には、フォトグラフィックメモリーという能力があり、とてつもない集中力で風景を写真のように隅々まで記憶ができる人がいるといいますが、齋藤さんの場合は、動的な風景を記憶していたので、フォトグラフィックというよりも、ヴィデオメモリーといえるのかもしれません。
音のない世界で齋藤さんが捉えた景色は、映像として、彼の脳内を駆け抜けていたのだと推察されます。その映像を焼き付ける方法としてのスケッチブックへの描画。ぜひ、実物を見て、齋藤さんの作品の走るような筆致を味わっていただきたいと思っています。

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