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【講演レポート】2017年フランス・ナント市における日本のアール・ブリュット展の開催記念 特別講演会

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ジャン・マルク・エロー氏は講演会の冒頭に、2017年に開催されるフランス・ナント市と日本で開催する障害者の芸術文化交流事業に全力を注ぎたいと、熱い思いを語られました。



10月18日(日)にヴォーリズ平和礼拝堂にて、2017年フランス・ナント市での日本のアール・ブリュット展開催記念講演会を開催しました。
講師としてお招きしたのは、前フランス首相、前ナント市長であり、2017年にフランス・ナント市と日本で開催する障害者の芸術文化交流事業の顧問に就任されたジャン・マルク・エロー氏と、劇作家・演出家の平田オリザ氏。会場となったヴォーリズ平和礼拝堂は約400名にのぼるお客様で埋め尽くされ、みなさん熱心に耳を傾けておられました。

会場では、講演が始まる30分ほど前から、さきらジュニアオーケストラの皆さんによる生演奏が行われました。礼拝堂に美しいストリングスが響く中、会場に到着されたジャン・マルク・エロー氏も演奏を楽しまれました。演奏終了後、さきらジュニアオーケストラのメンバーよりジャン・マルク・エロー氏の奥様へ花束が贈呈され、記念写真を撮影しました。



最初に平田オリザ氏の「少数者が世界の見方を革新する」と題した講演が行われました。平田氏の演劇の仕事にまつわるお話を軸に、現在の社会の状況などにも触れ、現代芸術の分かりにくさや、その役割について語られました。また、大人も子どもも生きづらい単一化した世界ではなく、重層性のある社会を作る必要があり、そのためには「少数者」の視点がキーとなるだろうというお話もありました。アール・ブリュットについて平田氏は、「何かわたしたちと違うものを見ているから感動するのではなく、本来わたしたちが最初に見たものを描いているから感動する。直感的にすごいものを見た、見てはいけないものを見た、見ない振りをしていた、見えないようにしていたものを表現しているのではないか。私達が社会参加をしていくために見落としている、人間生活に重要な様々な要素を思い出させてくれるものではないか。」と語られました。



また、滋賀県の文化振興条例の策定に関われた平田氏は、「滋賀県は日本で初めて、文化振興条例で障害者の芸術活動を福祉政策ではなく文化政策に位置付けた最初の県になる。さらにはそれを観光にまで結び付ける。諸外国から滋賀県のこれらの取り組みは注目を集めている。そしてとても重要な観光戦略の一つとしても、滋賀県が世界に誇るべきものだと僕は思っている。現実的な施策とアートの世界の精神性とその両方を持ちながら『アール・ブリュット』というものを捉えて頂くとより重層的に社会に浸透していくのではないかと思う。」という言葉で講演を締めくくられました。


続くジャン・マルク・エロー氏の講演では、冒頭に「2017 年ナント市でアール・ブリュットの大規模な展覧会を企画している。滋賀のアーティストにも来てもらうことになる。これは、日仏の大きなイベント。日仏共同事業になる。」と力強く発言されました。

その後、ナント市長在任時に取り組まれた、文化事業を核とした都市再生について、多くの写真とともに数々の具体的な事例を紹介されました。
市長就任当時は、様々な課題が山積し、荒廃した都市であったナント市。エロー氏はその復活に、市民の誰もが文化にアクセスできなければならないと考え、既存の文化財を利用することを決めます。港湾地帯にあった、空き工場も壊してしまうのではなく、手を入れリノベーションすることで文化拠点としました。その代表的なものの一つがビスケット工場を再生した「リュ・ユニーク」で、劇場・本屋・カフェなどが入っており一日中過ごすこともできる場所です。
個々の場所の再生とともに、数多くのイベントを企画・開催してきたことも揚げられました。白夜のアートイベント「ニュイ・ブランシュ」や、クラシック音楽を身近に楽しめる「ラ・フォル・ジュルネ」など、今では世界的に開催される企画もナント市が最初に始めたものだそうです。その他にも、映画やデジタルアート、ヒップホップまで様々なジャンルのフェスティバルが開催される都市となっています。イベントだけでなく、学校でダンスのワークショップを開くといった地道な文化政策も同時に行ってきたことも重要だと話されました。
これら政策によって、ナント市はまちの魅力を高め、多くの人を引き付け、文化で市民の誇りを取り戻すことを実現しました。
そして、文化政策を主に取り組むことを新しいブランドとして展開することにより、フランスだけでなく外国メディアにも多く取り上げられました。現在ナント市を訪問した人へイメージをアンケート調査すると、「いきいき」「ほほえむ」「気持ちいい」「新しいことをやる」「にぎやか」「活気」など良いイメージが多数返ってきているとのことです。



世界中から注目されるようになったナント市ですが、次の段階に入っています。これからは周囲の港湾都市とも連携しより広い範囲で活性化を目指したいとエロー氏は言います。建築物・カフェ・アート・料理・科学など、より多くの人にナントの魅力を知ってもらいたいと、「ル・ボヤージュ・ナント」という取り組みをスタートさせています。
また、取組を広げるだけでなく連結させていく、ナント市のいろんな楽しみ方を提案する、さらに文化を通して自然環境や人権問題など、社会問題提起も行っていこうとしているそうです。

エロー氏の情熱を間近で感じられた講演は「私が誇りにしているまちに、みなさんに来ていただきたい。滋賀のアーティスト、若い音楽家、アール・ブリュットの作家、この会場にいる人たち、ぜひナント市に来ていただきたい。」という言葉で締めくくられました。

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